2022.10.21
中屋丹幸さんの水墨画を初めて拝見したのは3年以上前になりますが
半紙にサラサラと落とされた墨の濃淡の美しさに、ものすごい衝撃を受けたことをおぼえています。
たった一色、黒という墨の一色が、なぜこんなに鮮やかな絵になるのだろうと
初めて肉眼でまじまじと見る水墨画に、心がふるふると感動しました。
そのときのご縁で、中屋先生の作品をほとりに飾らせていただいております。
各部屋に合わせたテーマとストーリーでそれぞれの絵を描き上げてくださいました。
「背景を知るとより楽しく」水墨画鑑賞をしていただけると思いますので
少しづつこちらでご紹介させていただきます。
「花鳥図」
ほとり館内ではいちばん大きな作品で、いちばん「胸キュン」な可愛さを放つ花鳥図。
二階の廊下に面した襖一面に描かれています。
可愛い囀りでいきいきと遊び歌う架空の鳥の姿と、鮮やかな緑の葉と、真っ赤な木の実。
墨一色ということを忘れて、脳内で彩色されていくようでいつも不思議な気持ちになります。
「草木や鳥のように、無作為に、ただ生きることを楽しむ」
生きる喜び、目の前の楽しさや幸せや恵を謳歌する姿が込められた作品。
大人というのは、ついつい未来や過去に意識を持っていかれがちですが
いやいやそうじゃなくて、今吹いている心地よい風や、風に揺れる枝葉の音や、枝で歌う小鳥の声…
「今この瞬間に起きている素晴らしいこと」に意識を向けて生きていきたいなと。
思うのは簡単、でもそれがなかなか難しい。小さい頃はみんな得意だったはずなのに…
なんて、そんな思いをめぐらせながら、ぼんやりと眺めていただけたら嬉しいです。
中屋先生の解説
「花鳥画は、吉祥的意味合いや山水画と同じく禅的意味合いを込めて描かれた。
今回の絵では、禅的意味合いを込めて描いたので花と鳥ともに架空のものとしました。
花と鳥は自然のなかの生きとし生けるものの象徴であり
禅問答では仏性に気づかせるための存在として取り上げられます。
花も鳥も大自然の中で作為なしにいきいきと生きています。
その姿を山水画と同様に観ていただければと思います。」
Mr. Nakaya Tanko is a Japanese ink painting artist.
When I first saw his paintings, I was shocked.
The gradation of shading and the strength of the lines made his drawings, which should have been done in black, look very colorful.
I thought that ink painting would suit the atmosphere of Hotori very well, so I have six of Nakaya’s paintings on display.
We would like to explain and introduce them in this journal.
Kacho-ga (painting of flowers and birds) has had a Zen meaning as well as Kissho meaning (a happy sign) and sansui-ga (Chinese-style landscape painting) since ancient times.
In this painting, both flowers and birds are fictitious, with Zen connotations.
Flowers and birds are symbols of life and living things in nature, and in Zen riddle they are taken up as being to remind people of the nature of Buddha. Flowers and birds live freely and lively in nature. Just like Sansui-ga (Chinese-style landscape painting). Hope you will enjoy seeing it as it is. It is a work that is paired with the scenery of the courtyard on the second floor.