2024.02.12
読もっかな、と思って購入したものの、分厚いのでしばらく積んであった本。
そろそろ読もうかな、とページを開いたら、見たことないほど小さい字がびっしりだったので、そのままそっと再び「積ん読」に戻された本。
宮尾登美子さんの「序の舞」をようやく読み始めたのは、ひとつきほど前でした。
700ページ超えの超大作。
明治から昭和に活躍した、京都を代表する女流画家「上村松園」の生涯を描いた作品です。
当時、圧倒的に男社会だった京都画壇で常に一目を置かれる才能に恵まれた彼女。
松園の人生は幼い頃からまあ波乱万丈。
悲しいことや嬉しいことがジェットコースターのようにこれでもかと巻き起こるので、続きが気になってページをめくる手が止まりません。
あくまでもフィクションなので脚色は多分にされていますが、実在の作品を松園が描くシーンが多く出てくるのが興味深いところ。
文字だけの情報に想像力が追い付かなくなったので、後半は上村松園の画集を手元に置いて読み進めました。
彼女は出身が京都のまちなか、私がいつも生活しているご近所あたり。
お店や通り名、主人や息子たちが通った学校など知った名前がたくさん出てくるのも楽しいです。
彼女の生家は「ちきりや」という茶葉屋さんなのですが、現存するちきりやさんにも「序の舞を読んで来てみました」というお客さんが訪ねてくるそうです。
京都のまちなかを舞台に描かれるお話、序の舞の聖地巡礼なんてしたら、とても楽しそう。
(そんなマニアックなイベント、誰か企画してください)
700ページどっぷり序の舞の世界に没頭し、上村松園の絵を肉眼で見たいと思い近場で探すと、福田美術館の竹内栖鳳展に松園の作品も展示されているとの情報。
竹内栖鳳は松園のお師匠さんであり、生涯憧れ尊敬し続けた男性。
小説にももちろん登場しますが、この二人の関係もとてもドラマチックに描かれています。
2月平日の嵐山。
近くのアラビカコーヒーは外国人の大行列ですが、福田美術館は人もまばらでゆったり静か。
動物好きにはたまらない、竹内栖鳳の作品。
ふわっふわの毛並みと、被毛の下に感じるような筋肉の動き。
代表作「金獅子」の制作にあたり栖鳳はフランスの動物園で3日間ライオンを観察しつづけ、写生しつづけたそうです。
当時リアルなライオンの姿を、この絵で初めて目にした日本人はどれだけ驚いたことでしょう。
栖鳳は彼の弟子たちに、対象物を徹底的に観察し写生し、その動物の匂いまで描き込めと教えたようです。
栖鳳の描く動物たちは、毛並みの感触や動きの途中の息づかいが伝わってくるような印象でした。
福田美術館「進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち」では、栖鳳の作品26点と、栖鳳の背中を追った彼の弟子たちの作品も多く鑑賞できます。
絵のために生涯を捧げ、海外で技術を学び、前衛的、革新的な勢いで新しい日本画の方向性を形付けた栖鳳。
「進撃の巨匠」とはうまいタイトルをつけるなぁと感心ひとしきりでした。
タイトル | 進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち |
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会期 | 2024年1月18日(木)~2024年 4月7日(日) 前期:1月18日(木)~3月4日(月) 後期:3月6日(水)~4月7日(日) |
開館時間 | 10:00〜17:00(最終入館 16:30) |
休館日 | 3月5日(火)展示替え |
場所 | 福田美術館 (京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16) |