ほとりオーナーの
「ほとり雑記帳」

ほとりの水墨画 松泉多清響

2024.02.29


玄関から入って最初のお部屋、中庭を臨む大きな一枚ガラスが印象的なリビングで、皆さまが最初に目にする水墨画がこちらです。

「松泉多清響」

中国唐代の代表的な詩人、孟浩然の漢詩の一節を題材に描かれました。

香山に住む上人を訪ねていく旅人の詩

「尋香山湛上人」

朝早く香山を訪れる旅に出たが、その山は遠く緑の中

木々の香りが百里四方に満ち、夕方にやっと到着した

谷の入り口で鐘の音を聞き、林の辺りは木々のにおいが芳しい

杖をついて友を訪ね、馬をとどめて暫く憩う

石門は殊に崖が険しく、竹薮の小道はいっそう静けさをたたえている

上人に逢えたことを喜び、朝まで寝ずに語り合った

常に真の隠者になることを求め、日々神秘的な風景を探し求めた

農夫は日が昇れば田に行き、山寺の僧は夕暮れに寺に帰る

松に囲まれた泉は静かに水の音を響かせ、あたりの苔には古い趣が溢(あふ)れる

どうかこの山に留まり、世の中も私を忘れ私も世の中を忘れてしまいたい

(孟浩然詩全訳注より引用)

松林に湧き出る泉の、清い水音に耳と心を傾ける旅人のお顔。

力の抜けたような、悦に入ったような、なんともゆるい表情で見ているこちらの気持ちも和みます。

作家の中屋丹幸さんはこの画を、苔むすほとりのお庭を眺め、手水鉢の水音に心を傾ける…そんな時間をここで過ごしてほしいという思いを込めて描いてくださいました。

「世の中も私を忘れ、私も世の中を忘れてしまいたい」

たとえ一泊二日の旅行でも。旅に出るとき人はそんな心持ちなのかもしれません。

どうぞ皆さまほとりにお越しの際はこのお顔で。

日常から離れ、ごゆるりとしたひとときを過ごしていただきたいと願っています。

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