ほとりオーナーの
「ほとり雑記帳」

ひきつづき大徳寺・聚光院特別拝観

2023.03.14


山本兼一さんの「花鳥の夢」

狩野永徳の絵師としての生涯が綴られた一冊です。


京都でお寺の拝観をしていると

「この襖絵は狩野なんちゃらの作で…」

「この障壁画は狩野派の誰それの作で…」

などと、やたら狩野の名前ばかり耳にします。

狩野って一体何人いるの?とか

そもそも狩野派の派って何?とか

よくわからない疑問を抱えたまま古い絵を眺めることも多いかと思いますが、もったいない。

この狩野派、中でも狩野永徳、松栄、元信の3人の背景を少し知っていると、襖絵や屏風絵にものすごくドラマを感じることができる、そんな楽しみ方もあると思うのです。


この冬、特別公開されている大徳寺・聚光院はまさにそれ。

知ってから見るほうが楽しい襖絵、そして史実と何気ない風景を重ね合わせて妄想する…

これは少しマニアックな喜びですが。


聚光院は5年半ぶりに特別拝観を開催。

目玉は狩野永徳と狩野松栄の本堂障壁画…すべて国宝で、京都国立博物館から、本来あるべき場所に里帰りしての特別公開となります。

狩野永徳は狩野家に生まれ、元信おじいちゃんからゴリゴリの英才教育を受けて育ち、持って生まれた才能を発揮し、若い頃から活躍しまくった天才絵師です。

その才能で足利義輝、秀吉、信長のみならずたくさんの大名やお寺から贔屓にされ、生涯で本当にたくさんのお寺やお城に絵を描きました。


そして狩野松栄というのは、永徳のお父さん。

狩野派を確立した元信おじいちゃんと、天才永徳に挟まれた松栄パパ。

実は松栄パパ、あまり絵の評価は良くなかったようです。

松栄は自分の才能のなさに思い悩んだのでしょうか。

若い頃から公方や大名に取り立てられて活躍する永徳に対し、卑屈な心を感じたでしょうか。

それとも、ぐんぐん伸びていく眩しい我が子の成長を、うれしい親心で見守っていたのでしょうか。


この聚光院特別公開では、永徳と松栄の襖絵が隣同士のお部屋で鑑賞できます。

2人の技術の違いを見比べたり、あるいは2人の良好な親子関係が垣間見える「仕掛け」を楽しんだり。


大徳寺は狩野永徳のみならず、秀吉、信長、千利休、長谷川等伯などなど、戦国時代に名を馳せた人物達が色濃く関わっているお寺です。

松林が美しい静かな大徳寺の境内は毎日お散歩したくなるくらい心地よい場所ですが

ここを舞台に繰り広げられた歴史のドラマに思いを馳せると見どころばかり。


境内にある金毛閣。

利休が秀吉に切腹を命じられる大義名分となった場所であり、永徳が長谷川等伯の天井画に心を乱されたであろう場所です。

「花鳥の夢」では利休がほんの一瞬だけ登場するのですが、そのほんの一瞬に残す言葉があります。

自身の圧倒的な美的センスで一世風靡をした利休が、永徳と松栄の絵に対して放つコメント。

それはとても強烈で印象的で、読んでいる私の背筋が伸びる思いがしました。



昨年9月からの聚光院特別公開も残すところあと2週間ほど。

駆け込み混雑が予想されますので、事前予約をして訪れてみてください。

お時間ある方はぜひ旅のおともに「花鳥の夢」を。

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